今日は、仕事帰りのBARで聞いた少しだけ怖い話をブログに書いてみようと思います。この話は15年以上前に聞いた話なので細かい部分は忘れてしまっていますが、現在でもよく思い出す話です。あくまで聞いた話ですからね。私の話じゃないですよ(笑)。
何の話かというと、法人に関する「名義貸し」についての話です。会社の経営に参加していない肩書きだけの取締役などがこれにあたります。
今回の話は少し怖いだけで、会社に関する名義貸しでトラブルに巻き込まれている方に有益な情報を提供するものではありませんので予めご了承ください。
それと、今回の話は残念ながら、事の真相が分からないまま終わります。なので、最後まで読んでもスッキリしないで終わってしまうので気をつけてください(笑)。私も話の結末を知りたいのですが、知るすべがないのであきらめました。
それでは、知らない人もいると思うので「名義貸し」の説明をしてから、順を追って話していきますね。
名義貸しとは何か?
まず、「名義貸し」と言われても意味がよくわからないという方のために、軽く説明をしておきますね。
名義貸しと言っても、色々と種類があるのですが、今回は、私が聞いた話に出てくるパターンの会社の取締役に関する名義貸しだけを説明します。
今回の名義貸しは、色々な理由で自分の名前(名義)を使って会社を設立できないAさんが、Bさんにお金を渡すかわりにBさんの名前(名義)で会社を設立(代表取締役もBさん)し、経営自体はAさんがするというものです。
これは大変に危険な行為なので、誰かから名義を貸してほしいと言われても絶対に断るようにしてくださいね。たとえそれが親兄弟であろうとも。
なかには、生活に困って生きていくために仕方なく、お金と引き換えに名義を貸してしまった、という悲しい話もあります。それでもダメですけどね。
個人的に信じられないことなのですが、名義を貸しているBさんは、会社がどれくらい儲かっているのかはもちろん、何をやっている会社なのかも知らなかったりします。
そんな感じなので、会社の経営が上手く行かなくなった場合、名義を貸しているBさんが「ある日突然、すべての責任を背負わされる」なんてことになったりします。人生を台無しにしたくなかったら名義は貸さないように気をつけましょう。
それでは、私が聞いた話を書いていきますね。
新しい顧問先の社長が何かおかしい
私が仕事帰りにBARのカウンターで飲んでいたときに、隣に座った見慣れない40代の紳士が、開業したての税理士だったんです(ちなみに、私は20代前半でした)。
私が税理士事務所に勤務(2020年現在は別の仕事です)していることを知ると、色々とアドバイスをしてくれる親切な方でした。
その開業したての税理士(仮に鈴木さんとしておきます)が、最近ものすごく悩んでいることがあるというんです。詳しい内容をあまり話したがらないので、マスターや私は無理に話を聞こうとはしませんでしたが、酔いが回ってくると自然とその話に。
40代紳士鈴木さんの悩み事とは、「顧問契約を結んだ会社の社長が何かおかしい」ということでした。
私は心の中で「なんだ、そんな話か」と思ったんですよ。こんなことをいうとあれですけど、中小零細企業の社長って変わり者が多いですから、珍しくも何ともないんです。
でも、鈴木さんの話を聞いているうちに、ちょっとだけ怖くなってきたんですよ。40代の真面目そうな紳士である鈴木さんが語った話の内容は、こんな感じでした。
名前を読んでも反応しないときがある
はじめのうちは、鈴木さんも喜んでいたんだそうです。何せ顧問料が月10万円で決算料などと合わせると年間180万円の顧問契約を結ぶことができたんですから(夜のお仕事関係の会社だから割高になっていたのかも)。
顧問料も毎月しっかりと支払ってくれるし、税理士事務所を開業したばかりの鈴木さんからしたら最高です。しかも、その社長(仮に佐藤さんとしておきます)は気さくな人で、すごく付き合いやすい社長だと感じたそうです。
でも、その佐藤さん、たまに名前を読んでも反応しないことがあるらしいのです。
鈴木さんが最初におかしいと思ったのは、佐藤さんが女性と一緒に歩いているのを街で偶然に見かけたときです。
お世話になっている顧問先の社長ですから、鈴木さんは挨拶でもと、少し離れた場所から声をかけたんです。でも、佐藤さんに何の反応もありません。
鈴木さんは、聞こえなかったのかと、もう一度大きめの声で名前を呼んだのですが、やはりまったく反応はなかったそうです。
それでも鈴木さんは、追いかけて挨拶しようかと思ったのですが、もしかすると、佐藤社長にとってまずいタイミングだったのかも知れないと思い、追いかけるのをやめたんだそうです。一緒に歩いている女性が紹介しづらい方だと思ったんでしょうね。
ただ、そんなことがあった後にも、鈴木さんが名前を呼んでも佐藤さんが反応しないことがあって、なんかおかしいなと感じていたそうです。
「社長」と呼ぶと必ず振り向くけれど、「佐藤さん」と呼ぶと振り向かないことがたまにあるんだとか。
何度か名前を呼ぶと、「あぁ、俺か・・・」とか言う始末。そこまでくると、さすがに40代紳士の鈴木税理士も気づきます。「この人、佐藤さん本人じゃないな」と。
名刺で名前を確認しながらサイン
そして、決定的にヤバイと思ったのが、法人の決算で申告書にサインをするときだったそうです。
申告書にサインするとき、佐藤さんは悪びれる様子もなく、自分の名刺を取り出し、名刺に書かれている自分の名前を確認しながらサインしたそうなんです。
普通ありますか? 自分の名前を確認しないと書けないことなんて(佐藤さんが打ち合わせなどで文字を書いているのは確認済みです)。
あの、いちおう言っておきますけど、使っているビジネスネームの漢字をど忘れしたとかではありませんからね(帰化や結婚などで名前が変わったばかりとかでもありません)。
会社を設立する際は、ビジネスネームではなく本名で登記しないといけません。そして、会社の登記簿には、代表取締役として間違いなく佐藤さんの名前が記載されていたということです。
鈴木税理士は、堂々と名刺を見ながら申告書にサインをする目の前の男を見ながら、「これはまずい事になった」と思ったそうです。
そう、これは会社の取締役の「名義貸し」です。しかも、おそらくけっこう悪質な。目の前の男は、本物の佐藤さんに名義を貸してもらい、佐藤さんのふりをして経営しているんです。
そのことに気づいた鈴木さんは、すぐに顧問契約を解除しようと思ったそうです。ただ、契約を解除するにしても恨まれないようにしないといけません。
その会社が警察沙汰になった場合、何かの拍子で自分も巻き込まれて税理士資格をはく奪されてしまっては元も子もありませんから。
それに、駆け出しの税理士にとって年間180万円の売上を失ってしまうのは痛すぎます。それで鈴木さんは、ここ最近、ものすごく悩んでいたんだそうです。
残念ながら、40代紳士の鈴木税理士とは、それ以来会っていないので、その後どうなったのかは分かりません。
話を聞いて疑問に思ったこと
この話はここで終わりなんです。申し訳ないです。でも、この話を聞いて当時は疑問に思ったことがあったんですよね。
「なぜ偽物の佐藤さんは、鈴木さんに自分が偽物だとバレないように気をつけなかったのか」ということです。少しはバレないように名前くらい覚えておけばいいのに、と思いませんか?
ここが今でもすごく気になるんですよ。バレたって構わない理由があったと思うんですよ。鈴木さんを仲間にでも引き入れたかったんですかね? うーん、気になる。
他にも疑問に思ったことがあるんです。
税務調査が入ったりしたときはどうするつもりだったのか(赤字会社だから税務調査が入らないと高を括っていたのかも)?
そもそも、そんな奴がなんで税理士に仕事を依頼しようと思ったのか?
会社を数年ごとに設立しては潰してを繰り返して、その都度名義人を変えたりしていたかどうかも気になります。
偽物の佐藤さんは誰かの身代わりだった可能性もありますし、本物の佐藤さんのことも気になります。
40代紳士鈴木税理士がホラ話をして、20代前半の若者をからかった可能性だってありますし。でも、あの鈴木税理士の様子を見ていたら、嘘だとは思えないんですよね。
名義貸しは絶対にやめましょう
今日は、会社の取締役の名義貸しについて少しだけ怖い話を書いてみました。その後の顛末を書くことができなくて、本当に申し訳ないです。
名義貸しの話は別に珍しくないのですが、名義を貸している本人は、危険な行為だと考えていない人がけっこういるみたいなので驚いてしまいます。
とにかく、いくらおいしい話だったとしても、名義は貸さないようにしましょうね。後で後悔すること間違いなしですから。
あなたの友人が「名義を貸してくれ」なんて言ってきたら、そいつは友人でも何でもないので付き合いを終わらせましょう。あと、名前を呼んでも反応が鈍い人には注意をしましょうね(笑)。
それではまた。